ショート・ショート 黄金の仮面
その国では、すべての赤ん坊は誕生と同時に「鑑定」を受ける。 鑑定の基準はただ一つ。容姿が、その時代の「美」の定義に合致しているかどうかだ。
合格した赤ん坊は「愛護区」へ送られ、あふれんばかりの称賛と慈しみの中で育つ。彼らの微笑みは宝石のように扱われ、その穏やかな性格はさらなる幸運を呼び寄せた。 一方、不合格となった赤ん坊は「実務区」へ送られる。そこでは誰も彼らの顔を見ない。彼らは厚い灰色の仮面を被らされ、労働に従事する。愛を与えられずに育った彼らの心は、仮面の下でゆっくりと、しかし確実にひずんでいった。
エヌという男は、実務区で働いていた。 彼は鏡を見ることを禁じられていたが、仮面の隙間から見える自分の指が、愛護区の住人のように細く滑らかではないことを知っていた。 「不条理だ。なぜ生まれつきの造形で、一生の愛の量が決まるのか」
彼は一生懸命に働いて金を貯めた。目的は、最新の「全人格整形手術」を受けることだ。 それは単に顔を変えるだけではない。過去の記憶、ゆがんだ性格、険しい表情筋の癖にいたるまで、すべてを「愛される者」へと書き換える恐ろしいほど高価な処置だった。
長い年月が経ち、老いたエヌはついにその費用を工面した。 闇の外科医は、彼の灰色の仮面を剥ぎ取り、数日かけて大手術を施した。
手術が終わった。 エヌが目を開けると、そこには鏡があった。 映っていたのは、神々しいほどに美しい老紳士だった。その瞳には慈愛が満ち、口元には見る者を幸福にする柔和な笑みが浮かんでいる。
「素晴らしい」エヌは声を上げた。その声さえも、心地よい音楽のようだった。「これで私は、ようやく愛される存在になれる」
彼は意気揚々と、愛護区の街角に立った。 通行人たちが足を止める。誰もがエヌの神々しい姿に見惚れ、次々と声をかけてきた。 「なんて素敵な方だ」「お近づきになりたい」 エヌは生まれて初めて、温かな愛の波に包まれた。
しかし、その時である。 空から巨大な鐘の音が響き渡った。
「国民に告ぐ。本日、美の定義が更新されました。これまでの『左右対称の端正な美』は、本日をもって『退屈な旧時代の遺物』と見なされます」
広場の巨大モニターに、新しい「美」が映し出された。 それは、でこぼこで、左右が激しく歪み、険しい表情をした——かつてエヌが「醜い」と忌み嫌っていた、まさにその顔だった。
周囲の反応は一瞬で変わった。 つい先ほどまでエヌを称賛していた人々が、一斉に彼を軽蔑の目で見始めた。 「見て、あの古臭い顔」「なんて滑らかで、気持ち悪いのかしら」 エヌの穏やかな微笑みは、今や「無気力な象徴」として忌み嫌われる対象となった。
エヌは混乱し、街を彷徨った。 そして、ふと路地裏のゴミ捨て場に、自分が脱ぎ捨てたはずの「灰色の仮面」が落ちているのを見つけた。
彼は慌ててその仮面を拾い上げ、自分の美しい顔に押し当てた。 ところが、どうしたことか。整形によって表情筋まで作り替えられた彼の顔は、あまりにも「豊かで穏やか」になりすぎており、無機質な仮面を被ることさえ拒絶してしまったのだ。
エヌは、新時代の美男美女たちが闊歩する街の中で、たった一人の「完璧に醜い、愛されない老人」として立ち尽くした。
ふと見ると、隣で一匹の野良猫が喉を鳴らしていた。 その猫は、どんなに時代が変わっても、人間から「可愛い」と呼ばれ続けている。
「……結局、デザインの問題だったのか」
エヌは柔和な笑顔を浮かべたまま、絶望の涙を流した。その涙さえも、今の時代にはひどく不格好に見えるのだった。