(つづき)城崎温泉駅で、浜坂行きの普通列車に乗り換えるまで少し時間があるため、改札を出て駅構内の売店に昼食用の駅弁を買いに行くことにしました。特急から下車した客が大勢たむろする中、駅のアナウンスが聞こえてきました。〜本日、餘部鉄橋、強風のため香住−浜坂間の列車の運転を取り止めております。ご利用の皆様には大変ご迷惑をおかけします〜 えーっ!何ぃ!うそぉ!一瞬耳を疑いましたが、駅構内の液晶表示板にも同じことが書かれています。確かに今日の天気は下り坂と予報されていたのは承知していましたが、まさか強風で餘部鉄橋の通過が抑止されているとは知りませんでした。駅員に確認すると復旧の可能性は少ないとのこと。迷った挙句、とりあえず普通列車に乗車して香住まで移動し、その先で待って、運転再開に一縷の望みを賭けることにしました。しかし期待を嘲笑うかのように、次第に風雪が強くなってきました。気を取り直して、先ほど購入した駅弁を車内で食べることにし、再び列車の旅を楽しむことにしました。城崎温泉駅から乗り込んだ浜坂行き改め香住行きの普通列車は、こちらも旧国鉄時代から使用されてきたキハ47型ディーゼルカーの2両編成でした。車齢約30年ほど経ちますが、内外とも更新工事がなされて、現代の設備水準にまで改造されています。車内は向い合わせのボックスシートが多く並ぶ構造で、程よく暖房が効き快適でしたが、車内と壁で仕切られたデッキ付きではないため、両開きのドアが開くと風雪が車内に入り込みます。そのため、客が乗降する間のみドアの開閉は押しボタンで乗客自らが操作する寒冷地仕様となっています。この駅から先の区間は殆どが非電化単線区間で、正に偉大なるローカル線の異名を持つ山陰本線の真骨頂です。日本海に面した小さな漁村を、長いホームと古びた駅舎、レンガづくりの古いトンネル、餘部鉄橋に代表される古い橋梁でつないだ細い鉄路が結んでいます。私達は、先ほど購入した城崎名物のカニ釜飯弁当をほおばりながら、しばし汽車の旅を楽しみました。(つづく) |