JRのダイヤ改正を明日に控えた今日の夕方、テレビのニュースを見ていると、改正後に廃止される寝台特急(ブルートレイン)「富士・はやぶさ」号の最後の発車を生中継していました。今回の改正でついに東京発九州行きの寝台特急が全廃になるということで、東京駅には約3千人のファンが集まったと報じていました。
映像では、発車ホームのみならず反対側の新幹線ホームにも、最後の勇姿を見届けようと鈴なりの人だかりが見え、発車の際にはどこかのスタジアムの応援を思わせるような地鳴りのような叫び声が聞こえてきました。そんな中、列車を牽引する機関車(EF66型)が長く余韻のある笛を鳴らして最後の旅路に発って行く姿を感動的に見ることができました。
私もこの趣味をやっていますので、今回の九州行きブルトレの廃止には関心を持っていましたが、こういう有名列車が廃止されるときは、いつも複雑な気持ちにさせられます。多くのファンがお名残乗車や撮影に駆けつけ、お祭り騒ぎになります。乗客が減って廃止になるというのに、廃止発表後は切符が瞬く間に売れるほど盛況になります。私はどうしてもこの騒ぎに加わる気になれませんでした。その理由は、大勢の人たちが集まることに馴染めないのと、運行現場の方たちに迷惑をかけたくないと思うからです。また何より、沿線以外に住む私にとって、この列車は全く縁がなく、特別な思い入れもないからというのがあります。
しかし、かく言う私も3年前に一度だけ、廃止される列車を追いかけたことがあります。関西本線の急行「かすが」号です。この列車だけは私にとって、子供の頃から親しんだ特別に思い入れのある列車でしたから、撮影も最終列車の乗車も行かずにはいられませんでした。しかし、廃止直前の頃は普段静かな沿線に沢山のファンが撮影に来ていたり、いつもは2両でも空いていた列車が増結されて、その上立っている客がいるなど全く普段と様子が違うことに違和感を覚えたものです。また、この時のダイヤ改正で、寝台特急「出雲」号(東京〜出雲市)も廃止されましたが、廃止直前のある日に、所用で京都駅前のホテルに滞在する機会があり、興味本位に、機関車の付け替えが行なわれる深夜の京都駅へ様子を見に行ったことがあります。0時過ぎでしたが、ホームは撮影する沢山の人で溢れ、先頭の機関車の付近は立錐の余地もないほどになっていました。駅員のフラッシュ撮影は止めてくださいの連呼にも関わらずあちこちでフラッシュが焚かれ、それを他の撮影者が制止することもない、そんな光景につくづく嫌気がさしてしまいました。
鉄道の現場に迷惑をかけない。これがこの趣味の最低限のルールですが、こういうときは、この基本が守られないことが多いようです。追いかけたい気持ちは分かりますが、今回の「富士・はやぶさ」の狂騒ぶりを見ていると、同じようなことが起こっていないかと心配になります。こういうときこそ、ファンのマナーが問われます。マナーを向上させ、鉄道趣味を楽しむ人たちがマナーの良い紳士淑女であると認知される存在でありたいと思います。
何はともあれ、最終列車が無事に終着駅に着くことを願っています。
※画像左は、「富士」の方向幕です。数年前に大阪で開かれたイベントで購入したものです。右は5年前に撮影した「さくら・はやぶさ」号 |