新金谷を出発したSL列車は、大井川に沿って一路終着駅である千頭を目指します。私とってこの旅の主目的は、千頭という終着駅に向うことではなく、SL列車に乗ること自体を楽しむことに尽きます。車窓に映る日本の原風景も楽しく、蒸気機関車の鼓動を五感で感じることができるのも楽しみの一つです。私はトンネルに入ってもあえて窓を閉めず、煙や煤にまみれることを楽しみます(他のお客さんにはいい迷惑ですが・・・)。時には目が痛くなったり、顔が黒くなったりしますが、それが蒸気機関車の旅というものと思っています。あの香ばしい煙の匂いがしないと何とも物足りなく感じるでしょう。JRの復活蒸気列車には、快適性を重視してか、窓が開かない(開けにくい)客車を使用しているものもあるようですが、それではせっかくのSLの旅の魅力が半減してしまいます。その点、大井川鉄道は快適性など及びもつかない旧国鉄の旧型客車を使用していますから、その心配はありません。 今、国内で利用者が減って経営に喘ぐ地方ローカル線が、あの手この手で列車に乗って楽しむ観光路線への道を探り始めていますが、ここではすでに早くから実践されていました。特筆すべきは、SL列車の運行だけではなく、沿線の観光資源との連携や物販などトータルで集客増と収益につながる取り組みとしている点であると思います。地方ローカル線の多くの沿線地域では、少子高齢化、人口減少が進み、マイカーへの依存度が高まる状況の中、地域外からお客さんを呼びこむことで利用者を増やし(減少を緩やかにし)、結果として地域住民のための移動手段を残すことができれば、手法として大いに参考になるのではないでしょうか。この夏は、アジアで初めて、機関車トーマスにちなんだイベント列車も走るそうです。楽しみですね。 |