上野商工会議所の新春講演会として、JR九州代表取締役社長 唐池恒二氏の講演があるというので聴講に行ってきました。 JR九州というと、かの「ななつぼしin九州」など今や数々の観光列車を世の中にリリースし、鉄道の新たな価値を見出した戦略で業界注目の会社ですが、その社長となればさぞ多忙を極めていると思いきや、どうして、伊賀の片田舎に講演に来ていただけるのか、貴重な機会を逃すまいと話の興味もさることながらその謎も知りたくて出かけて行った次第です。 講演会冒頭、早くもその種明しが司会の方からあり、企画担当者の熱烈な電話によるラブコールが功を奏したそうで、社長氏曰く、基本的に講演はお断りしているそうなのですが、九州管内以外なら引き受けることもあるとのこと、遠慮せず言ってみるものですね。 それでも当日、17時半からの講演のために博多を12時に出発され、5時間かけて17時に伊賀入り、終了後はすぐ大阪に出られて、1泊。翌朝6時の新幹線で博多に戻り9時にお客様をお出迎えするのだとか。伊賀入りには名張からタクシーをご使用されたとのことは少々残念でしたが、やっぱり超多忙のようです。 さて、講演内容はというと、社長氏が大阪泉南地方の出身とあって関西弁でユーモアを交えながらのトークは聴衆を惹きつけるのに十分でした。テーマは「観光からまちづくり」ということで、ざっと約百数十人の聴講者は殆どが中高齢の商工業者と思しき人たちで、しきりに得心したかのように頷いておられ、今後の伊賀のお店のおもてなしの変革に期待したいところです。社長氏が仰っておられたのは、伊賀は素材が多く羨ましいところ、物語が沢山できるはずだとのことでした。反対にストーリーのないところは飽きられるとも・・・。JR九州の観光列車は単なる観光列車ではなく、デザイン&ストーリー(D&S)列車と言って、それぞれに物語を持たせている。たとえば、肥薩線の「はやとの風」は薩摩の人たちが誇りに思う「島津義弘」が関ヶ原の戦いで背走せず、東軍の陣地を正面突破で突き抜けたその姿から命名したとのことでした。現在9つあるD&S列車は、8つまでが社長氏の命名で、今までの列車名にはあり得なかった名前を採用したことや、指宿枕崎線の「指宿のたまて箱」で、地元の浦島太郎伝説にちなみ、列車のドアが開いたら煙が出る特色ある仕掛も社長氏の発案だそうです。 観光は交流人口の増加が目的だが、観光に来た人たちが地域の良さを感じてリピーターとなって、究極はそこに定住してもらうことが目的だとも仰られ、鉄道を観光資源に九州各地のまちおこしを進められていることがよく分かりました。 また、地域にしても会社にしても個人の店にしても、大事なのはそこに満ちている“氣”だそうです。氣とは、元気や気力、気迫に通じるものですが、スピードとキレのある動き、元気な声、同時に隙のない緊張感が備わっていることが人を惹きつけるとのこと。社長氏はまさに氣が全身から溢れたような方で、このような人がリーダーでいるJR九州が元気なのも納得しました。 |