JR西日本から、先日、SL北びわこ号の運行廃止の発表がありました。コロナ禍で運転取りやめが続いていた挙句のことで、沿線地域の住民、関係者はさぞ落胆されていることだろうと推し量るところです。 過去、滋賀県長浜市を中心とする湖北路エリアは京阪神に近い距離にあるにも関わらず、鉄道でのアクセスに課題がありました。その原因のひとつが北陸本線の電化方式(交流)が京阪神エリアのJR線(直流)と異なるゆえに一部の列車しか直通できず、近畿地方にネットワークを持つ新快速などの利便性の高い列車が乗り入れることができず、観光振興をはじめ地域振興を阻む状態にありました。このため、JR、沿線自治体、関係者が連携し、琵琶湖を取り巻く交流電化区間を直流化する取り組みを行い、鉄道と沿線地域の活性化を先進的に実現してきました。その取り組みのシンボル的存在となってきたのが、関西唯一の蒸気機関車牽引による列車でもある北びわこ号だったのです。 今回の廃止の理由をJR西日本は、牽引する客車がコロナ感染対策に必要な換気機能の確保ができないことや、老朽化による保守管理の困難さを挙げています。もともと蒸気機関車の運行には沿線警備の必要など一般列車以上のコストがかかると言われています。鉄道事業者の収支では恐らく釣り合わないはずです。しかし、観光客誘致など沿線地域全体に利益を及ぼすことを考えれば、トータルで黒字にできるはずで、山口線のSLやまぐち号がレトロモダンな客車を新製して運行を続けていることを考えれば、もう少し、鉄道事業者と沿線地域が知恵を出すことが出来なかったのだろうかと悔やまれます。JR西日本は今後も鉄道を活用した地域振興に取り組むと言っているようですが、今後の両者の取り組みに影を落とすのではないかと懸念するところです。 鉄道趣味の面からも非常に残念です。私自身も何度も現地に赴き、乗車、撮影と楽しませていただきました。そのたびに沿線の魅力あるスポットにも立ち寄り、地域の良さを堪能させていただきました。北びわこ号亡きあとも、湖北路に足を向けたいと思いますが、確実にその機会は減ってしまうでしょう。 コロナ禍の利用者減少に喘ぐ鉄道事業者には余力が無くなっている。同じく沿線の地域力にも限界がある。難しい問題ですが、今しばらく耐え忍んで、コロナの後の展望を見通して欲しかった気がします。 画像左:長らく高原のポニーことC56型が牽引してきたが、本線運転から退き、近年はD51型(画像右)が復活し牽引にあたっていた。 |