小滝駅はその昔、大糸線が全通するまでは糸魚川方面からの終着駅だったことから、山間の小駅でありながら、瀟洒な駅舎を持ち、交換設備や貨物側線の跡を見ることが出来ます。駅の壁に貼られた「熊出没注意」の貼紙に恐れおののきながら、駅前の国道を進み、姫川に架かる橋梁で上下列車を撮影することにしました。早朝の小雨もようやく上がり、青空も見え、列車の通過する頃には絶好の光線状態となり、紅葉の山々を背景に気持ちよく撮影することができました。駅へ戻ると神戸から撮影に来たという方とお会いし、しばし鉄談義に花を咲かせた後、私達は再びキハ52に乗り、色づく山々と清流が織り成す素晴らしい景観を堪能しながら糸魚川に戻りました。糸魚川では少し駅前を散策し、有名なレンガ車庫とキハ58・28などを撮影。ラッセルヘッドを付けたディーゼル機関車も庫から顔を出していました。そういえば昨冬、大糸線は大雪に見舞われ約1ヶ月も運休になった苦い経験があります。平成7年には水害で未曾有の被害を受け奇跡の復旧を遂げるなど、常に自然災害と向き合いながら、厳しい経営を続けていると言われています。古いディーゼルカーを国鉄色に戻したり、これらを使ったリバイバル列車を運行するなど、全国の鉄道ファンに注目される路線の一つではありますが、それらがこの路線の経営安定化により寄与するためには、私達ファンも撮影だけでなく出来るだけ乗車して収入増に貢献し、路線の魅力を発信していくなどの支援が必要だと思います。また、タレントを使ったTVCMで宣伝していた、京阪神から白馬方面へのスキー列車「シュプール号」も大糸線の冬の常連でありましたが、長野五輪にあわせて整備された道路網の充実により、スキー客の鉄道離れが進んだのか、最近は全く聞かなくなってしまいました。この日も学校休校日であるためか午前中に乗車した列車は全て乗客10数名程度と寂しい状況でした。私達は、帰路もう一度キハ52に乗り込み、途中、早朝に降り立った平岩で途中下車し、駅近くの姫川温泉というところで日帰り入浴を楽しみました。湯量の多い硫黄の香りのするいいお湯の温泉でしたが、紅葉シーズンの土曜日であるにもかかわらず、旅館街はひっそりとしており、立ち寄った旅館も私達以外にお客さんは居ませんでした。大糸線非電化区間の沿線は自然のパノラマが堪能できる素晴らしい車窓風景と、温泉など沿線の魅力は十分あると思います。鉄道と沿線地域が活性化するにはどうすればよいか、ここでもまた同じ課題が頭をよぎりました。そんな難しい命題と温泉でありつけなかった昼飯のことを心配しながら、私達は南小谷から新宿直通の特急あずさに乗車。非電化区間との落差に驚きながら松本へ向い、中央線の特急しなので木曽路を抜けて戻ってきました。 |