伊賀鉄道とともに近鉄から分社化された養老鉄道(近鉄時代を含めて。)にはじめて乗車してきました。 養老鉄道は、桑名〜大垣〜揖斐間を結ぶ57.5キロの単線電化の路線。線路幅は伊賀鉄道と同じ狭軌ですが、伊賀鉄道のような狭小カーブがないため、南大阪線系統の20m級大型車両を貸与されて運行しています。 車両は、前述の近鉄本線系タイプの通勤型車両が運用されていますが、分社化に伴い、マルーンと白の近鉄通勤色から懐かしいマルーン一色の旧近鉄通勤車色に統一されています。
この中に、今年9月から、オレンジに白帯を巻いた車両が登場し沿線で一際目立つ存在となっています。これは、かつて、大阪阿部野橋から橿原神宮前を結ぶ南大阪線でラビットカーと呼ばれた高性能通勤車両の専用塗装を復活したもので、養老鉄道が、当時の色に塗り直して運行しているものです。 ラビットカーは、昭和32年に南大阪線に登場し主に各駅停車に運用されました。加減速性能に優れていたため、旧型車の急行列車と同時分で運転が出来、優等列車の合間を縫うように走るイメージからウサギにたとえてラビットカーと命名され、車体側面に岡本太郎デザインといわれるウサギのイラストが描かれていました。オレンジに白帯の塗装は昭和40年代初めには塗り替えられてしまいましたので、今回の復活は約40年ぶりになります。
養老鉄道は、一度訪問してみたいと思っていた路線ですが、亀山での紀勢本線全通記念イベントと兼ねて乗車する機会に恵まれました。しかも、僅か1編成しかないラビットカーの運行状況は事前に分からなかったのですが、偶然、桑名から乗車することが出来、列車の終着である大垣まで乗り通しました。
養老鉄道初乗車の印象は、車窓は、三重県から岐阜県へ揖斐川沿いの田園風景の中を走るため非常に長閑な感じでした。車両や駅設備は近鉄由来のため、雰囲気は伊賀鉄道とよく似ています。旧国鉄との連絡貨物輸送を行っていたため、主要駅には貨物側線が残された大きな規模の駅があるのが特徴です。路線延長が長いため、全区間を乗り通す需要は少なそうですが、桑名、大垣近郊を中心に区間利用者が多い感じで、特に大垣周辺は揖斐方面への利用も含めて結構利用が多いと感じました。また、沿線にはサイクリングロードが多いとの事で、自転車を積み込んで利用する人の姿も見かけました。サイクルトレインが定着しているのも特徴のようです。 また、今回、復活塗装車であるラビットカーに乗車して感じたことは、乗車すると車内は他の編成と何ら変わりなく、ラビットカーに乗車していることを忘れてしまいそうになったのが少々残念でした。伊賀鉄道で始まった復活塗装車が、養老鉄道でも実施されたことは我々ファンには非常に興味深いことなのですが、両鉄道共に今後期待するのは、それぞれの復活塗装の由来が車内のどこかに記されて一般の利用者にも理解される配慮がなされることです。伊賀鉄道の鹿特急、ラビットカーも由来が分かるのは一部の鉄道ファンだけでは、一般利用者や沿線住民とかけ離れたものになってしまいます。乗って楽しい、乗ること自体が目的になるような工夫が求められるでしょう。 |