へんなかお・・
へんなかお〜 へんなかお〜 へんなかお〜
綾瀬はるかさん主演のドラマ 「たったひとつの恋」の ヒロトとナオの会話ではありません・・
最近の新幹線の先頭形状 700系 N700系、 800系、E5、E6 など
海外の高速列車とは少し違い へんな顔 とも カモノハシとも いわれたりしていますが アレ が 騒音その他の環境影響と安全に配慮した最先端の「流線型」 であることは うすうすご存知の方も多いに違いありません
なぜ あんなかっこう をしているか 大変 長い話 になりますが ひとことでいえば 日本の新幹線には トンネルが多数あるからです しかも そのトンネルの出入り口が住宅地に近かったりする ので
日本の新幹線は、第一に走行時の騒音が小さく、 そして 第二に トンネルへの突入・退出入が 空気力学的にスムーズでなければならない から です
初めは信じられない人も多いのですが 新幹線車両がトンネルに突入すると ふたをしてあるわけではないけれど トンネル内の気圧が上がります 列車速度が早い(音速の1/3以下ですが)からです
圧力の上昇幅は 山陽新幹線 N700系 300km/hで 3kPa = 0.03気圧 = 300mm水柱 程度 (ΔP は 列車とトンネルの断面積比に比例し、列車速度の2乗にほぼ比例します) この圧力が上昇したエリアは 圧力の低い部分、すなわち反対側の出口へ向かって 津波のように伝わっていきます。 音速で
そしてまた 信じられない人も多いのですが この圧力の波: 圧縮波は トンネルの出口で反射 して 波としてはプラスマイナスが逆転して(圧縮波が膨張波となって) 突入側へ戻っていきます (以下、反射の繰り返し) で この出口で圧縮波が反射する瞬間に 圧力がトンネル外に放射されます
これが トンネル微気圧波といわれる現象で このパルスの大きさは やってきた圧縮波の波面の時間勾配に比例するのです 波面の勾配は 列車とトンネル形状にかかわる寸法(例えばトンネル直径+先頭部長さ)を通過する 時間( (D+d)/Vというイメージです)に先ほどのΔP上昇するので 結局 列車速度の3乗に比例するということになります (300km/hのときは100km/hの27倍になる。 なので大変 なわけです)
なので 新幹線車両がトンネルに入ったとき形成した圧縮波が急な立ち上がりをしていると このトンネル微気圧波が大きくなって (無対策だと) トンネルの出口側で「ドーン」 てな 花火のような圧力パルスが発生してまうのであります・・
以下 数行 各駅停車 お急ぎの方は この先の ☆印にお進み下さい
で このトンネル内圧縮波 いわゆるスラブ軌道という トンネル内面がコンクリートの平滑な面で形成されている場合 「非線形効果」という効果で 圧縮波が伝播するとともに どんどん波面が急になっていく という恐ろしい傾向があります 山陽新幹線や東北新幹線のように スラブ軌道の長さ数kmというトンネルでは トンネル内圧縮波の波面は 圧力変化がステップ状になってしまう 有名な「衝撃波」 になってしまうこともあるのです (無対策の場合)
☆ もちろん そのようなことになると モロ 沿線の環境問題になってしまうので トンネル坑口に緩衝工という構造物を 多くのトンネル坑口に設置してあります トンネルの断面積より一回り大きい断面積のフードを取付け 列車突入時の圧力上昇を ゆっくりにする施設です 新幹線に乗っていても 一瞬のことなので確認するのは至難ですが 長さ10〜50m程度の わりと大きい構造物です
で 300km/hという速度は こうした地上側の対策だけではムリがでてくるのと 騒音問題 列車どうしのすれ違いのショックの緩和 などの対策と合せた 車両側対策 として 列車先頭部形状の(空気力学的)最適化 が行われている ということです
いかにして トンネル突入時の圧力の上がり方を少なくするか
○ 列車の断面積を小さくする (トンネルの断面積は簡単には大きくできないので) ○ 1両目だけでも 列車断面積を小さくする いかにして トンネル突入時の圧力の上がり方を(時間的に)緩和するか
○ 列車先頭部を長くする
500系 では 先頭部長さが15mほどありました かっこいいですね でも 長くするだけじゃだめ というか ムダがある
与えられた先頭部長さで 最も圧力上昇がスムーズになる形状があるはず 先頭部のデザインで 最も 圧縮波の圧力勾配が最小になる形状に作る できれば 短い先頭部長さで 最大の緩和効果を得たい
このことが求められているわけです
そして その答えは
最先端部を除いて 列車の断面積変化を一定にする ということです 先端からの各位置(x座標としましょうか) における断面積が一定の割合で増加する形状にする
新幹線を 断面が円形の回転体とするならば 先頭部はx軸を中心にした放物線を回転させた形状 です
いま カモノハシのような 新幹線の形状は 先頭部の断面積増加率が 一定になるように 連結器(先端カバー)や前照灯 台車 運転席 乗務員ドアなど その増加率を保ったまま かつ流線型となるように配置・設計した形状なのです
もちろん 空力騒音や空気抵抗なども考慮します
空力騒音は(基本的に列車速度の6乗以上に比例するといわれているので) 極めて重要ですが
意外に思われるでしょうが 実は 空気抵抗はそれほど重要ではありません
新幹線は 直径(列車幅3.3m程度)に比べて 長さが100倍以上(16両で約400m)あるため 圧倒的に 中間部の摩擦的抵抗が大きく 先頭と後尾の圧力抵抗成分の寄与は小さいのです まあ 流線型をしていればよい というか
もっというと 空気抵抗は 列車速度の2乗に比例する現象なので 空力騒音やトンネル微気圧波 に比べたら速度依存性は低い方なのです
ただし 先頭部 = 後尾部 (形状は同一)ですから 後尾部となった場合に 空力が原因でゆらゆら振れる(動揺する)形状は避けなくてはなりません
後尾部として 安定的で 渦離れ?のよいことが求められます
さて このように 現在の新幹線の先頭形状のバックグラウンドは非常に深いものがあります
この説明でも 列車走行にともなう明かり区間の圧力変動 の低減とか 駅通過時の列車風(風圧) の低減対策とか トンネル微気圧波の派生的現象 の対策とか トンネル入口緩衝工とのマッチング とか トンネル内走行時の列車動揺(乗り心地) とか 雪の付着対策 バラスト等の飛散防止 とか
省略してある部分が かなりあります が
これらを 総合的に考慮して ○ 数値シミュレーション(スパコンによる計算) ○ 風洞実験 ○ 回転体模型の高速突入実験
などで 検討・解析を繰り返して 先頭形状が決定されています ただ 先頭部の断面積変化を一定にする というのは もはや譲れないくらいの基本線 になっていると思います
これは 300km/h級の高速列車をバンバン走らせるとき 環境問題をクリアするためには 避けて通れないデザインのステップになっているわけです
高速鉄道にもかかわらず トンネルが大変多い という日本ならではの問題でもありますが これだけの要素を 科学と経験に基づいて研究開発を行っている JRグループの技術基盤はすばらしいと思います 一朝一夕にマネできるものではないはずです
戦前・戦中の技術者をはじめ 日本の鉄道システムを維持発展させてきた多くの関係者の 叡智と努力による到達点だと思います 大げさではなく
長くなりましたので またの機会に
実は 書きたいことは 新幹線の先頭形状ではなく・・別のところにあります・・
てなこって (つづく)
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