11月に入って秋が深まり、ようやく気候が落ち着いてきた先日、久しぶりに一人旅に出た。 旅の目的は、以前から行きたかった広島県尾道市を散策することと瀬戸内の景色が車窓から楽しめる呉線の乗車。そしてメインは、少し足を伸ばして山口線でSLやまぐち号にリベンジすることだ。 リベンジとは穏やかでないが、実は10年前の夏にも家族を連れて、やまぐち号の旅をしたことがある。しかし、その時は、前年の水害の影響で山口線の一部区間が運休していた上に、SLの調子が悪くディーゼル機関車が牽引するDLやまぐち号となってしまったのだ。まあ、それはそれで良い旅だったし、今やDL牽引の列車の方がレア度は高いのであるが、やはりSL牽引のやまぐち号には乗っておきたい。しかも、コロナ禍やSLの不調でここ暫くは運行が出来ず、今年5月からようやく本格運行が始まったばかり、新調された専用の客車も興味がある。暑い時期は避けてと、行けるタイミングを計っていたら、今年の運行が終了する11月になったという次第である。 前置きはさておき、本題の列車はというと、今のカマ(牽引機)はD51200号機(梅)、言わずと知れたデゴイチである。やまぐち号のレギュラー機は本来、貴婦人ことC571号機シゴナナであるが、そちらは、近年、不調が続き、京都梅小路の庫で検査修理中なのである。数年前に動態保存機としてC56160号機に代わり、本線復帰を果たしたデゴイチが今年のやまぐち号の先頭に立ってきた。筆者もこれまで何度もその姿を見てきたが、あらためて客車5両を繋いだ姿を見ると、やはり堂々とし大型蒸気の面目躍如といったところである。さて、出発前の撮影など一連の儀式を終え、列車に乗り込む。客車は、これまで国鉄時代から使用されてきた12系客車をレトロ風に改造したものだったが、現在は完全な新製車両である35系4000番代に代わっている。驚くことにこの車両、最新設備と機能を備えた車両であるのに外観も内装も細部まで昭和初期の旧型客車をオマージュしていて、とても雰囲気がよいのだ。懐かしくも新しいとはこのことを言うのだと実感する。5両のうち、両端の車両は展望車となっていて、津和野行きの最後部となる車両はかつて、特急つばめなどで連結された最上級クラスの展望車両を再現していて、その再現度も秀逸である。運行するJR西日本のこの列車に対する意気込みが相当強いことが伺える。実は、この車両の指定席を予約しようと試みたが、人気が高くチケットを取ることは叶わなかったのである。列車全体でも指定席は満席とのことで、やまぐち号が根強い人気に支えられていることを実感した。結局、席が取れたのは一般車の4人がけボックスシートの1席であったが、運良く進行方向窓側に陣取ることが出来たのは幸いであった。 汽笛一声、新山口を多くの見送りを受けながら静々と出発、連結の間隔が開く時の客車特有のショックは、新製車両らしくあまり感じないが、機関車が牽く独特の前後の揺れは確かに感じた。津和野までの約2時間、復路も含めて4時間の感動と興奮の旅がはじまった。(続く) ※画像左=新山口駅ホームに入線したSLやまぐち号、右=旧型客車の良さを再現した新型客車 |