帯広で1泊した翌朝、駅前バスターミナルへ向かう。鉄道だけで行くはずがこの日はバス移動。この日の目的地は内陸の陸別町だ。以前なら、鉄道で行くことができたが、旧国鉄地北線を引き継いだ北海道ちほく高原鉄道ふるさと銀河線が平成18年に廃止されてしまっているので仕方がない。廃線ルートに沿って走る十勝バスの帯広陸別線は鉄道廃止代替バスともいえる。 帯広から陸別までの所要時間は約2時間40分。途中、旧地北線の起終点でワインの産地の池田、松山千春の生誕地で有名な足寄を経由する。今は日に9本が設定されているが、乗車した便は帯広からの通し客は私だけ。短い区間利用がほとんどで、常に5人以下と寂しい車内だ。鉄道があった時はもう少し多かったのかもしれないが、バス転換されてもこのままではバスの存続も危ういのではないかと心配する。札幌など都市圏以外の広大な北海道の大地の中では、民間事業で公共交通を維持するのは大変だと分かる。途中経由する小さな町はメインストリートやバス待合所などインフラが綺麗に整備されたところが多いが全体に活気はない。バスは幹線道路でも路面状態は良くなく、バス車両の古さもあって乗り心地は良くない。長時間移動は正直疲れるのも敬遠される理由かもしれない。鉄道が廃止され、地域に応じた最適な移動モードとされた代替バス路線だが、利用は鉄道時代よりさらに減り、沿線地域の賑わいが失われていくのは鉄道の存廃問題を抱える全国各地の将来を見ているかのようだった。 さて、ようやく目的地の陸別に到着。バス停は鉄道駅だった陸別駅前にあり、駅舎が当時のまま残されている。というか今もここは現役なのだ。ここでこの度のメイン、“あること”を体験する。 陸別では、ちほく高原鉄道が廃線になった2年後の平成20年から、駅構内や一部残された軌道、車両を活用して、運転体験や乗車体験などができる観光鉄道として再生を図った。もちろん、沿線住民の日常の足としての役割は果たせないが、鉄道遺構を活用して町外、いや道外からここにやってくる交流人口を増やそうとしているのだ。 しかも運転体験は何と日本最長の片道5.7キロ。距離だけでみれば立派な鉄道路線だ。 陸別旧駅舎は道の駅や宿泊施設も併設しており、私はここで泊まりがけで、ディーゼルカーの運転体験に挑む。鉄道ファン垂涎の夢のような時間を過ごしにやってきたのだ。 ※画像上から、陸別行き十勝バス(池田駅前)、復元された足寄駅舎、陸別駅舎全景、運転体験に使用されるディーゼルカー |