長年指導して頂いた先生(79才)が亡くなる。ひと月前迄
元気でおられたが、人生はかないものです。蓮如様(1415
〜1499)の御文をコピーして出棺の時、棺に花と一緒に喪
主さまの了解えて供える。
ふしょう そう か
御文。それ、人間の浮生なる相をつらつら観ずるに、およそ
しちゅうじゅう ご いちご
はかなきものは、この世の始中終、幻の如くなる一期なり。
まんざい
さればいまだ万歳の人身をうけたりという事を聞かず。
ぎょうたい
一生過ぎ易し。今にいたりて、誰が百年の形体を保つべき
や。我や先、人や先、今日と知らず、明日とも知らず、おくれ
もとのしずく つゆ
先だつ人は、本の雫、すえの露よりも繁しといえり。
こうがん ゆうべ はっこつ
されば朝には紅顔ありて、夕には白骨となれる身なり。
すでに無常の風きたぬれば、すなわち二つの眼たちまち
とうり
閉じ、一つの息ながく絶えぬれば、紅顔むなしく変じて桃李
よそお ろしんけんぞく なげ
の装いを失いぬるときは、六親眷属集りて嘆き悲しめども、
かい
更にその甲斐あるべからず。
やがい よわ
さてしもあるべき事ならねばとて、野外に送りて夜半の煙と
なかなか
なし果てぬれば、白骨のみぞ残れり。あわれというも中々お
ろうしょうふじょう
ろかなり。されば、人間のはかなき事は老少不定のさかいな
れば、誰の人も、はやく後生の一大事を心にかけて、阿弥陀
仏を深くたのみまいらせて、念仏申すべきなり。あなかしこ
あなかしこ。 蓮如さんからの手紙、五帖目第一通