テトリスで遊ぶことによって大脳皮質が厚くなり、脳の能率も上がることが脳撮像により証明されました。
子どもの頃「ゲームばかりしてないで勉強しなさい!」と怒られたことのある人も多いと思いますが、毎日適度にゲームをする習慣は実は頭を良くするかもしれません。
詳細は以下から。
Is Tetris Good For The Brain?BMC Research Notesに発表されたニューメキシコ州アルバカーキにある研究機関Mind Research Networkによるこの研究は、ゲームを練習することによる脳への影響を構造的磁気共鳴画像法(structural MRI)と機能的磁気共鳴画像法(functional MRI)の2つの画像法で調査したという点が新しいそうです。
研究では「練習」によって灰白質が増え脳の性能が向上するかを調べるため、認知技能の組み合わせが要求されるゲーム「テトリス」を用いました。実験では26人の思春期の少女に3ヶ月間にわたり毎日30分ずつテトリスで遊んでもらい、その3ヶ月の期間の開始時と終了時に構造的MRIと機能的MRIでスキャンを行い、テトリスで遊んでいない対照グループの少女たちも同様に撮影しました。構造的MRIは皮質の厚みを、機能的MRIは脳の能率的な活動を解析するために用いられました。
テトリスを練習したグループは練習前にくらべ脳の活動能率が上がっていることが観察され、この分野でのいままでの研究成果を裏付けました。また、対照グループに比べ皮質も厚くなっていましたが、活動能率が上がっていた部分とは異なる部分で厚みが増していたそうです。
画像の赤い部分は皮質が厚くなった部分、青は活動能率が上がった部分を示します。左の画像は左半球、右が右半球です。
© J. Haier et al, BMC Research Notes 2009
ブロードマンの脳地図による区分でいうBA6(Brodmann Area 6:前運動野・補足運動野)、BA22(ウェルニッケ野)、BA38(中側頭回)で皮質の厚みが増しているのが観察されました。BA6は複数の動きが組み合わさった複雑な動作の計画にかかわっていると考えられており、BA22とBA38は多感覚統合(視覚・聴覚・触覚などによる情報をまとめること)にかかわると考えられています。
それに対し機能的MRIで脳の能率の向上が見られた部分はBA32(背側前帯状皮質)、BA6、 BA8(前頭眼野)、BA9(前頭前野背外側部)、BA46(前頭前野背外側部)、BA40(縁上回)など主に右前頭葉・頭頂葉に分布しています。これらの部分は批判的思考・論理的思考・言語などをつかさどると考えられています。
「過去5年間のこの分野の研究でもっとも驚くべき成果の一つは、ジャグリングの練習により運動野の灰白質が増えるという発見です」と今回の研究に参加した臨床神経心理学者のRex Jung博士。「私たちは知的な活動の練習が皮質を厚くするかを見るために、このテトリスの実験を行いました。もし厚くなれば、これまでの研究で知的訓練により脳の能率が上がるという結果が出た理由が説明できます。皮質の厚みが増すというのは灰白質が増えたということで、灰白質が増えれば、脳のその部分はそんなに頑張らなくてもテトリスをこなせるようになるということです」
「テトリスで遊んだ少女たちとテトリスをしなかった少女たちの大脳皮質の厚みの違いを目にし、私たちはとても興奮しました」と、テトリスの練習で脳の能率が上がると発見した1992年の研究の筆頭研究者で今回の研究にも参加したRichard Haier博士は語っています。「しかし、活動能率が上がった場所とは違う部分で皮質が厚くなっているというのは、驚きでした。皮質が厚くなることと脳の能率が向上することの関係はいまだ謎につつまれています」
研究者たちは今後もっと多様な大勢の被験者で研究を続け、テトリスによる脳への効果が練習をやめたときに元に戻る可逆的なものなのかどうかも調べたいと考えているそうです。また、テトリスで身に着けたスキルに関連する脳の変化がほかの認知の領域(作業記憶や処理速度、空間認識など)にも影響するかについても関心があるとのことです。