農業では欠かすことのできない肥料ですが、排泄物を用いた「下肥」は衛生的な面から食糧には使いにくい部分があるため、化学合成された肥料のほうが効率が良いとされてきました。
しかしフィンランドの研究者チームによると、トマトの栽培において人間の尿を利用した肥料は安全で、味や栄養量も化学肥料のものと同等、生産量においても匹敵することが分かりました。
詳細は以下。
Sustainable fertilizer: Urine and wood ash produce large harvestフィンランドのクオピオ大学の研究者グループは、2007年から2008年にかけて人間の尿を採取し摂氏約7度で半年間保存、有害な微生物やバクテリアの有無をチェックした後、木の灰と混交したものをトマトの肥料として利用しました。
その結果、肥料を利用しなかったトマトと比べて4.2倍、化学肥料を用いたものと比べても同等量の収穫が得られました。また含まれる栄養素についても有利な面が多いとのこと。また、20人の被験者による味覚テストでは、肥料の違いによって、味に変化はあるものの「どのトマトも同じくらい美味しい」という結果となったそうです。
健康な人間の尿は窒素やカリウム、リン酸塩といった、植物に欠かせない無機物に富んでいます。糞便を含んでいなければ細菌汚染の心配もありません。現在、世界中で研究が進められており、南アフリカではトウモロコシでの応用に成功しているとのこと。
実用化にはまだ時間がかかると思われますが、研究者は化学肥料による環境の汚染を防ぎつつ収穫量を維持するという方法を模索するよいきっかけになるのではないかとしています。