春は出会いと別れの季節などとよく言われますが、鉄道車両も春のダイヤ改正を期に引退していくことがしばしばあります。 最近は新聞やテレビなどメディアでも、引退する鉄道車両を目当てに駅などに集まり別れを惜しむファンの姿や、一部にマナーを守らないファンの姿を取り上げることが多くなりましたので、良くも悪くもそうしたことが一般に知られるところとなりました。 さて、この春も長年、鉄路の主役として活躍した車両の引退がアナウンスされているのですが、今年の特徴としては、時節柄、ファンの集中による密を避けることを理由に、日時を知らせずに人知れず運用から外されるということがあるようです。 その中で注目されている3車種を挙げると、まず一つ目は、地元びいきと言われそうですが、近鉄12200系スナックカー(画像左)でしょうか。近鉄最大勢力を誇った特急車両で約50年も活躍しました。現在に至る近鉄特急網を築いた立役者と言っても言い過ぎではないと思います。特急が走る本線系統でこの車両に出会わないことがないほど代表格的存在でした。この車両の引退により、濃紺とオレンジの伝統の車体色も見納めになります。実はこの車両、先日すでに定期列車から退いてしまっており、一部団体臨時列車として走行する以外はその姿を見ることは出来なくなりました。 二つ目は、JR貨物のDD51型ディーゼル機関車です(画像中央)。国鉄型ディーゼル機関車の代名詞とも言えますが、旅客会社でもすでに同形式の定期運用はなく、JR西日本とJR東日本にわずかに残るのみとなっています。JR貨物では、唯一、関西本線名古屋(稲沢)〜四日市間で定期運用を担ってきましたが、新形式(DF200型)に交代し、同社からは完全引退となります。かつて、国鉄の無煙化(SL列車の廃止)に寄与し、全国各地でその姿が見られましたが、いよいよ終焉に入ったと言えそうです。現在、一部の列車で、画像のような異なる形式の機関車が2両繋がった(重連)運用を見ることができ、大変珍しい姿ゆえにファンの注目を集めています。 三つ目はJR東日本の185系特急型車両(画像右)です。こちらも国鉄時代に誕生し、普通から特急まで使用できる汎用車両として活躍しました。それまでの国鉄特急車両の定番であった、クリーム色に小豆色のカラーから、白地に緑のストライプをあしらい、車体形状も一線を画すデザインとされ、登場当時は新時代の到来を感じたものでした。主に伊豆半島方面への特急列車など首都圏を中心に運用されました。筆者も過去、伊豆下田方面に向かう「踊り子号」で乗車したことがあり、重厚なモータ音を響かせ力強く走る姿に魅せられた一人です。 近鉄スナックカー以外は、現在もなお定期運用に就いていますが、有終の美を飾れるよう、安全に見届けたいものです。 |