阿字ヶ浦から、折り返し勝田行きのキハ20に乗り、途中下車をしながら今来た道を戻ります。まずは線内の中核駅である那珂湊駅で下車します。風格のある駅舎と機関区を備えたこの駅は、一昔前の国鉄で良く見られたローカル線の主要駅といった感じです。駅舎内には何人かの駅員の姿も見られます。改札口を抜けると広い待合室があり、その一角に「おらが湊鉄道応援団」のブースがあり、係りの人がチラシの製作に余念がありません。沿線の各駅には「未来へ走れ!おらが湊線」と書かれたのぼりが多数掲げられており、廃線を防ぐために利用促進運動をされているようで、その出張カウンターが駅の中にあり、応援団の団員の受付や沿線案内をしているようなのです。そこでは軽快な音楽が流されており、湊線応援のイメージソングだとのことで、私も楽譜と歌詞が印刷されたチラシを頂いてきました。実はこの湊線は運営する茨城交通が平成20年春を目途に廃線にすることを表明していました。しかし沿線の熱心な利用促進運動などの取り組みが実り、利用者の減少に歯止めをかけることができ、茨城県やひたちなか市の支援も得られる見込みとなったため、廃線の危機という最悪の事態は回避されることになったのです。具体的には、湊線の運営を茨城交通と市が出資する第3セクター方式で設立する新会社が行い、新会社の設備投資や経営に対する補助を県や市が中心となって行うというものです。廃線の危機を乗り越えられた背景には、鉄道事業者や行政の英断もさることながら、危機感を感じた沿線住民が廃線阻止のために自ら立ち上がり、何が出来るかを考え行動したからこそだったのでしょう。しかし、ひとまず廃線を防ぐことができたのは喜ぶべきことですが、これで安心することはできません。事業者や行政にだけ頼ってこの湊線を未来永劫に支えていくことは不可能だと思うからです。これからも沿線住民が中心となって「おらが湊線」を愛し、利用していくことが未来へ走らせる絶対条件だと思います。これは全国で廃線の危機に瀕している地方鉄道すべてに通じる鉄道存続への条件でしょう。そんなことを考えながら、私は那珂湊駅を後にして、再び列車に揺られながら、途中駅で気ままに撮影を楽しみ、終着勝田駅へ戻りました。次回来るときも、さらに魅力的な湊線であり続け、この古いディーゼルカーも元気でいて欲しいと願っています。(完) |