ふとしたきっかけで鉄道趣味の面白さに再び目覚めた。楽しみ方は色々鉄道趣味は奥が深い。私の趣味活動をほんの少し披露し、併せて伊賀地域の鉄道の将来について考えます。
 
2024/11/27 22:33:00|遠征記
SLやまぐち号にリベンジした(その2)
山陰の小京都「津和野」に向けて疾走する「やまぐち号」は、市街地が連続する県都山口までは平坦区間を軽やかに駆けるが、ほどなくしてトンネルや勾配区間が連続する山間区間に入る。速度も落ち、喘ぎながら進むようになると、デゴイチには申し訳ないが、筆者はここからが蒸気機関車の旅の真骨頂だと考えている。この旅をぜひ五感で感じたいと思っているが、幸いにもこの“新しい”客車は窓が開く。ボックス席に相席の方にはお断わりして、側窓を少しばかり開けさせてもらうと、あのいい香りが漂ってくる。鼻の奥に少しツーンとする、かぐわしい“ばい煙”の香りだ。そして耳を澄ませば、線路のつなぎ目を刻むジョイント音に加えて、前方からボッボッボッというブラスト音も聞こえてくる。これこそが蒸気機関車の旅の醍醐味である。トンネルではばい煙が入るので窓を閉めてという放送が入る。私は全く平気なのだが、他の方には迷惑だったかも知れない。
行程の中ほどにある地福駅では10数分の停車時間がある。峠越えを頑張ったデゴイチもここで暫し休憩をとる。津和野までは9駅に停車するが、ほとんどの駅は停車時間が短く、それでもホームに降りて写真撮影に挑もうとする人は多いのか、毎回、車掌から追い立てられるように促され車内に戻されている。しかしここではようやく落ち着いて記念写真を撮ることができるのだ。どうせ急ぐ旅でもなし、過密ダイヤの中を行くのではないのなら、できればもう少し停車時間の長い駅を設けてほしいところだろうか。それにしても、沿線でやまぐち号を見守る地元の人たちは温かい。列車に向かって手を振る人の多いこと多いこと。沿線で手を振る人を見かけたら、是非ふり返して下さい。と案内放送も入る。45年間、山口線沿線で愛され、支えられてきた証だろうとしみじみ思う。
その後、いくつかのトンネル、鉄橋を越え、田園風景の中を進むと、この地域特有の赤い瓦屋根、石州瓦を葺いた家並みが眼下に見えてくる。早くも終点の津和野である。2時間の旅も筆者にとってはあっという間だった。しかし、落胆することは無い。まだお楽しみは続くのだ。(続く)
※画像右=峠越え後、地福駅で小休止するデゴイチの面構え、画像左=展望車のオロテ35は、戦中戦後に活躍した展望車マイテ49を再現したもの







2024/11/24 21:38:01|遠征記
SLやまぐち号にリベンジした(その1)
11月に入って秋が深まり、ようやく気候が落ち着いてきた先日、久しぶりに一人旅に出た。
旅の目的は、以前から行きたかった広島県尾道市を散策することと瀬戸内の景色が車窓から楽しめる呉線の乗車。そしてメインは、少し足を伸ばして山口線でSLやまぐち号にリベンジすることだ。
リベンジとは穏やかでないが、実は10年前の夏にも家族を連れて、やまぐち号の旅をしたことがある。しかし、その時は、前年の水害の影響で山口線の一部区間が運休していた上に、SLの調子が悪くディーゼル機関車が牽引するDLやまぐち号となってしまったのだ。まあ、それはそれで良い旅だったし、今やDL牽引の列車の方がレア度は高いのであるが、やはりSL牽引のやまぐち号には乗っておきたい。しかも、コロナ禍やSLの不調でここ暫くは運行が出来ず、今年5月からようやく本格運行が始まったばかり、新調された専用の客車も興味がある。暑い時期は避けてと、行けるタイミングを計っていたら、今年の運行が終了する11月になったという次第である。
前置きはさておき、本題の列車はというと、今のカマ(牽引機)はD51200号機(梅)、言わずと知れたデゴイチである。やまぐち号のレギュラー機は本来、貴婦人ことC571号機シゴナナであるが、そちらは、近年、不調が続き、京都梅小路の庫で検査修理中なのである。数年前に動態保存機としてC56160号機に代わり、本線復帰を果たしたデゴイチが今年のやまぐち号の先頭に立ってきた。筆者もこれまで何度もその姿を見てきたが、あらためて客車5両を繋いだ姿を見ると、やはり堂々とし大型蒸気の面目躍如といったところである。さて、出発前の撮影など一連の儀式を終え、列車に乗り込む。客車は、これまで国鉄時代から使用されてきた12系客車をレトロ風に改造したものだったが、現在は完全な新製車両である35系4000番代に代わっている。驚くことにこの車両、最新設備と機能を備えた車両であるのに外観も内装も細部まで昭和初期の旧型客車をオマージュしていて、とても雰囲気がよいのだ。懐かしくも新しいとはこのことを言うのだと実感する。5両のうち、両端の車両は展望車となっていて、津和野行きの最後部となる車両はかつて、特急つばめなどで連結された最上級クラスの展望車両を再現していて、その再現度も秀逸である。運行するJR西日本のこの列車に対する意気込みが相当強いことが伺える。実は、この車両の指定席を予約しようと試みたが、人気が高くチケットを取ることは叶わなかったのである。列車全体でも指定席は満席とのことで、やまぐち号が根強い人気に支えられていることを実感した。結局、席が取れたのは一般車の4人がけボックスシートの1席であったが、運良く進行方向窓側に陣取ることが出来たのは幸いであった。
汽笛一声、新山口を多くの見送りを受けながら静々と出発、連結の間隔が開く時の客車特有のショックは、新製車両らしくあまり感じないが、機関車が牽く独特の前後の揺れは確かに感じた。津和野までの約2時間、復路も含めて4時間の感動と興奮の旅がはじまった。(続く)
※画像左=新山口駅ホームに入線したSLやまぐち号、右=旧型客車の良さを再現した新型客車







2024/10/18 8:01:12|その他
近鉄の新型通勤車両に乗る

近鉄の通勤型一般車としては、24年ぶりに新造された8A系。デビュー前からマスコミなどでも取り上げられ、注目度抜群となっています。ようやく先日10月7日に営業運転を開始したとのことで、対面の機会を伺っていたところ、10日目にしてその機会が巡ってきました。
10月17日、京都での所用を終え、いつもなら伊賀への帰路はJRが定番なのですが、近鉄で帰れば運次第で、8A系に遭遇するかも知れないと思い、今回は近鉄京都駅にてお茶でも飲みながら、暫しお目当てが登場するのを待ってみることにしました。
8A系が運用されているのは、大阪、奈良、京都を中心とした京都線、奈良線系統のみですが、今はまだ4両編成が4本だけとのことで、遭遇出来る確率は低いだろうと思い、気長に待つつもりでいました。しかし、駅に着いて程なくして新田辺行き普通列車として入線したのを発見。はやる気持を抑えながら近づき、外観や車内をじっくり観察。現物はこれまでの近鉄一般車の常識を破る近未来的なデザインや有名デザイナーの手による温かみのある車内も相俟って噂通り秀逸なものでした。
本当は大和八木方面への急行運用なら乗って帰るのに好都合なのですが、走りも堪能したいため、普通列車であるもののこのまま乗車。従来車に比べ、騒音や振動がなく静粛性に優れていることに驚きました。シートはロングシートとクロスシートをモードチェンジできるLC仕様となっていますが、従来車のLC用シートよりも座面の肉厚があり座り心地がよいと感じました。来年度以降は大阪線や名古屋線でも運用が始まる予定ですが、同線の長距離運用でも体への負担は少ないだろうと感じました。
また、8A系の大きな特徴とされる、やさしばシートは、特にふかふかした優しい座り心地で、子供連れの方や大きな荷物を持った方には喜ばれることだろうと思います。
良いことづくめの新車なのですが、ひとつ残念に思ったことは、乗務員室後ろの開放感がなく、前面展望が効かないこと。貫通扉部分しか前が見えないのです。何らかの理由によるものだろうと思いますが、もう少し工夫できなかったのかなと思います。
8A系の登場により、現在活躍中の車齢約50年にも及ぶ旧型車両が順次置き換えになるとのことですが、近鉄では車齢の高い車両も、清潔、綺麗によく手入れされ、古さを感じさせることがありません。この新車もぜひ末永く大切に扱っていただき、沿線住民にも長く愛される車両になってほしいと思います。







2024/10/06 17:52:05|その他
実証実験は名古屋伊賀上野間で
関西本線(山線)の活性化を検討する関西本線活性化利用促進三重県会議が、今秋にも実施することをアナウンスしていた、都市間直通列車の実証実験は、来年2月に名古屋伊賀上野間で2日間実施すると発表された。
当初は、名古屋奈良間での運行を予定していたところだが、設備面等での課題を理由に断念したようである。このニュースが流れた時、18年前に廃止された急行かすが号の復活かと話題になったが、現状での実現可能性を模索した結果、この形に落ち着いたと推察する。
さて、この取り組みは、JR西日本が関西本線亀山加茂間を維持困難線区として公表したことを契機として、沿線自治体である三重県と伊賀市、亀山市が同線区の活性化、利用促進に真剣になり、JR西日本が呼応したことが背景にある。
もちろん、それ以前から、伊賀市などでは長く電化を目標に、独自の活性化への各種取り組みを行ってきていたが、危機感を抱いた三重県がようやく本腰を入れたことで、具体的な動きになったのではと感じる。また、交通ネットワークの重要性を理解する国交省出身の知事が就任したことも大きかったのではないだろうか。
直通運行の実証実験は、2日間のみということもあり、色んな批判的意見も聞かれるが、私は実験とはいえ、今まで要望だけで終わってきたことが具体化することから、これから考えられるであろう具体的取り組みのひとつとして評価したいと思う。
あえて言うならば、鉄道の繁栄、衰退は沿線地域の繁栄、衰退と同時進行であるということ、従って、沿線地域の活性化に向けた取り組みも是非、鉄道の活性化と歩調を合わせて取り組んでほしい。そして、それには正解がない、たとえ、今回の実証実験が成果を出せなくても、次の手、また、その次と持続的に取り組んでいただきたい。決して、やってる感だけとか、やれるだけのことはしたが駄目でした。ということのないように切に思う。
※画像は、柘植駅での普通列車の交換風景。お茶の京都ラッピングを施したキハ120型3両が揃ったシーン







2024/09/01 15:16:02|その他
鉄道の被災に思うこと
台風10号の稀な遅さに翻弄されるここ数日。新幹線をはじめ各地の在来線も計画運休や一部では直接被害で不通となるなど、近年、気候変動による災害に対する脆弱性を露呈している国内の鉄道であるが、被災が路線の存亡に直結する例も後を立たず、それが経営的に厳しい地方の鉄道路線に顕著になっていることが何とも悩ましい限りである。
最近では、昨年に被災し、全線で運休が続く山口県のJR美祢線では、今後を話し合う会議で、JR西日本は復旧に工期5年、58億円以上の費用を要すると述べたらしい。こう言われると、沿線住民、沿線自治体の中に半ば諦めムードが蔓延するしかないだろうと思う。もとより鉄道事業者単独での復旧は難しいと伝えていたようだ。他にも、被災からの復旧を目指すJR肥薩線、大井川鐵道も見通しは明るくないようだ。
伊賀地方の鉄道も過去に台風による被害を受け、設備を大きく損傷することが幾度かあった。直近では2007年10月に発生した台風21号による被災が記憶に新しい。この時は、関西本線加太〜柘植間で軌道南側ののり面が崩落するなどし、同区間では数ヵ月にわたって不通、バス代行となった。また、伊賀線でも四十九町地内で、のり面が崩落し、復旧まで長く徐行運転が続いた。幸い、この時は双方とも復旧に向けた判断が早く、工期はかかったものの無事に現状回復出来、事なきを得た。
しかし、今後はどうだろうか、気候変動による激甚的な自然災害は、いつ起きても不思議ではない。影響が大きい新幹線のような大動脈や都市部の重要路線ならいざ知らず。地方の鉄道は決して他人事ではないということである。関西本線は、特に伊賀地域を含む山線区間は被災しやすい上に、鉄道事業者から単独維持困難線区とされている。もし、大きな自然災害に見舞われ、設備に多大な損傷を受けたとしたら、線区の存亡につながるのは疑いようがない。維持困難線区とされて以来、ようやく三重県をはじめ沿線自治体は、次々に利用促進や活性化策を打ち出し、やっと本気を見せるようになった。そのこと自体は良いとしても、一度の被災でその努力が皆無になることも考えられる。活性化策を検討することと同時に、万が一の被災に備え、その際もどのように復旧させ、路線維持に向けた仕組みを講じるかを関係者間で議論、検討しておくべきではないかと思う。伊賀線もしかり、施設の所有管理者は伊賀市であるが、財政上の制約がある。万一の時をシミュレーションし、国や県などの災害復旧補助制度をいかに活用するのか、また、無ければ平素から問題提起し、制度構築に向けた働きかけを行っていくべきではないかと思う。
これから本格化する台風シーズンを前に、優先すべきは個々の生命財産を守ることであるが、皆の財産であるインフラ=鉄道を守り維持することに関係者の一層の注力を期待したいと思う。
※画像は2017年の台風で被災した関西本線ののり面崩壊現場。上部に軌道がある。