伊賀の奥

「伊賀の奥」は私の処女句集の名であり、「不治人」は私の仮名である。読んで判るだろうが、私はきわめて重度の障害者だ。そんな私の生きる糧にしているものが俳句である。伊賀の奥に隠遁してより三十二年が経とうとしている。不治の身になってより三十七年、なんと長い年月であろう。否それが、過ぎてしまえば凄く早く感じられるから不思議である。そんな私の存在をサイトとして誇示したい。
 
2012/11/17 19:14:00|その他
時雨時
  今日はしぐれ忌であった。芭蕉は1695年没だから、今年は319回忌である。一般の人なら百回忌まで、いや五十回忌が関の山であろう。そう思うと芭蕉はなんと偉大な人であろうか。「今日は芭蕉さんの命日です」とデイサービス利用者さんに話したが、あまり興味なさそうであった。 昨日は伊賀市長選挙があった。悪天、夕方には雷も鳴った。市民に変化を促す雷と雨風であったかもしれない。汚点を残して退任した前市長が後継を託した人が落選、元アナウンサーが予想外と言うと失礼だが、大差をつけて当選。選挙は水物とつくづく感じた。私と一つ先輩、上野高校同窓会が推薦している人と、元市職員、退職後は芭蕉翁顕彰会の理事として何ども顔を会している人との一騎打ちだ。どちらを押してもと………苦しんだ。まあ、いずれに投票したかは推測にお任せしょう。私は郵便投票、どんな天候でも問題はない。ところが、あの風雨の中、我が「しらふじの里」の利用者さん、百歳のおばあさんが投票に行かれた。これには頭が下がると共に、その意思に敬意を表した。30歳~50歳の人たちが平気で棄権するのだ。それを考えると腹が立って仕方なかったし、百歳のお婆さんが自分で記載し、翌日、この人に投票しましたと言ったのには驚いた。
 
  空き箱の重ね置かるる十一月 
 
  しぐれ忌や身のほどの句を携へて
 
  時雨忌の頃の伊賀なり煤け空
 
  しぐれ忌や茶の実椿の実の爆ぜて
 
  しぐれ忌へ夕餉の蕪煮て来しと
 
  枯葎ところどころに朱色の実
 
  靴と靴叩き仕舞へり冬旱
 
  枯野人赤き包みを抱へ行く
 
  冬ざれの野原挟んで家二軒
 
  小春日の食卓を這ふ青き虫
 
  しぐれ忌の頃には当然にして時雨がよく降る。伊賀の煤けた空の色を私は好きである。今日も夕方には雷鳴が轟いた。何もない平穏を喜んでいる。
 
  これが11月12日に更新しょうと思い書いた文章である。今日までこれが更新出来ずにいた。実は、その翌日の朝に母が転倒して膝を強打、平穏が一瞬にして変わる。整形外科受診、レントゲンを撮るも血が溜まっておりよく映らず、翌日市民病院にてCTを撮ると膝半月板がひび割れているとの診断であった。手術、ギブスは無用だが副木を1か月して、その後リハビリと医師に言われる。その一瞬から母の世話にはなれない私の衝撃は非常に大きい。母も己の事態、治療が理解できず、今まで通りにトイレへ行く、ひび割れした右足を地に付けず浮かさねばならないのに私の言うことなど全く聞かず介護士を困らせている。痛みがあるはずだがトイレへ行こうとする。言われたことをすぐ忘れる母に成すすべは、さあ、これからどうなるやら。短期記憶障害であり、転んだことも忘れているようだ。スタッフの言うことも聞かず、すぐ怒り、「死んだ方がましや」と言うのを聞くことは実に辛い。転倒後も私を介護してくれようと思っているようだ。「一月辛抱して、早く治して俺の世話してくれ」と繰り返し話すのだが全く通じない。時雨も風も無情、母子にまた一つの試練が。今日、やっとパソコンが開けられたので………。
 
 夜の更けて枯野の風の枕元
 
 夜にしぐれ朝にしぐれて風の伊賀
 
 
  




     コメント一覧
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m(_ _)m アリガトォ~★
不治人さん、メールを有難うございました。
本当に寒くなって来ましたね。ー_ー。。。。。
神戸も1月頃の寒さが続いています。
お元気そうで嬉しい思いでいっぱいです。^-^
お母様も気丈に頑張っておられるようで、メールを読みながら、目が潤んで来ました。
おとなしくなりました・・・と言うのは、一見良さそうですが、反面心配でもありますよね。
でも母親として、いつでも不治人さんの事を気にかけていらっしゃる姿には本当に頭が下がります。
ブログはマイペースで書いて下さいね。
これからも時々メールさせて頂きます・・・(・。-☆ネッ♪

お二人のご健勝を心からお祈りしています。( ^.^)( -.-)( _ _)


はこちゃん  (2012/12/05 13:58:18) [コメント削除]

はこちゃんへ
寒い日が多くなりました。こんな夜はなぜか……。心配になりましたが母はおとなしくなりました。補装具をつけたら歩けるので無理せずに歩いています。しかし、装具すると痛いと言って外して歩くので困っています。まあ母は「もう治った、大したことない」と医者ではないのにそう思い込んで勝手なことを言うのである。まあなんとかなるさ。日が経てば治るだろう。私の介護もボチボチしてくれております。感謝、感謝です。ではまた。おやすみ。
不治人  (2012/12/04 22:51:05) [コメント削除]

コンニチハ、♪Ю―(^O^ ) 
不治人さん、本当に大変ですね。
今までお母様がいて、いろいろ手を貸して戴ける事が当たり前と思っていたのに、突然それが無理であると分かった時の不自由さ、言葉では言い表せないほどのショックだと思います。
改めてお母様の存在の大きさを認識されたことでしょうね。
でも夜も必ずどなたかがいて下さるというのは、とても心強いですね。
しばらくお母様が元気になられるまでの我慢と思って、多くの皆様に支えられながら頑張って下さいね。
お好きな焼酎を止められた効果が一日も早く来る事を心よりお祈りしています。( ^.^)( -.-)( _ _)
朝晩は冬の寒さになってきました。
風邪など引かないように気を付けて、元気でお過ごし下さい。



はこちゃん  (2012/11/24 12:30:36) [コメント削除]

お二人さま、ありがとう
 はこちゃん、ぺんぺん草さんメール返しありがとう。不自由です。ちょっとアレとって、顔の左側掻いて、お茶一杯飲まして、ベッド起こして。そんなことがすぐしてもらえません。母よ早く動けるようになってと願っています。一月はダメと観念している私です。治ってまた私の介護してくれるこことを願って、今は周りの人の世話になろうと思っています。泊まりも出来るようにしてもらって良かった。今回のことも凌げた。夜勤の人の世話にはなれないが、そこにいてくれるだけでも安心である。何かあれば頼める。
 しかし、母の存在、母の有難た味がよく解り、今まで当たり前のように思っていた自分が情けなくなります。いい体験です。母が居なくなったときはこんな状態だと、心して生活せねばと思う。好きな焼酎も14日からやめました。これも修業です。お二人さま、励ましていただきありがとう。頑張ります。寒さに向かう折、風邪にはくれぐれも気を付けて。お元気で。

不治人  (2012/11/23 22:12:39) [コメント削除]

心からお見舞い申し上げます
思いがけない不運にお袋さんはもちろんご貴殿も大変なことになりましたね!不自由な様子が目に浮かびます。何も役に立てずにすみません。1日も早い回復を祈ります。ご貴殿には不自由ですが、何度も困難を乗り越えて来た忍耐力があります。こんな時くらい遠慮せず、周りの人たちに助けてもらって乗り越えてください。しなければいけないこと、たくさん抱えているのは、誰より小生が良く分かっています。どうか、無理のないように優先順に少しずつ片づけてください、良くこのブログ出来ましたね!貴殿よりも優位な小生が「何してるんや!」と自分に言いたいです。はこちゃん!お元気そうで何よりです。きっと小生のもいつも覗いてくれているんでしょう…ごめんなさい。でも、貴女のコメントが、どれほど不治人さんの支えになっているか、小生には良く分かりますよ!寒さ募ります。お2人とも十分ご自愛くださいませ
ぺんぺん草1  (2012/11/21 21:31:43) [コメント削除]

こんにちは・・・(^-^)
不治人さん、しばらくご無沙汰だったので、体調でも崩されたのかなーと心配していましたが、本当に大変でしたね。
その後のお母様の様子は如何ですか?
お歳を召していらっしゃるので(ごめんなさいね)、回復には少し時間がかかるのかも知れませんね。( ^.^)( -.-)( _ _)
しばらくは不自由な生活が続くことになると思いますが、一日も早い回復をお祈りしていますね。
実は私も数か月前に転んで足の親指の爪をすっかりはがしてしまい、ようやく治りかけたと思ったら玄関の外階段で落ち葉に滑って転倒し、左腕を 複雑骨折し、膝を強く打ってリンパ液が溜まってしまい、しばらく本当に不自由な生活を強いられました。
ようやく普段の生活に近い状態に戻りましたが、今でもまだ腕も膝も痛みを感じています。
それだけにお母様の不自由さ、お気持ちが痛いほど良く分かります。
足の痛みがあっても、自由に動かなくても不治人さんのお世話をしようとする気持ち、本当に母親だからこそですね。
出来る事なら何かお手伝いを・・・との気持ちばかりで何もできず、唯々早い回復をお祈りすることしかできない自分の不甲斐無さを痛感していま す。
最後の2句に、不治人さんの心の中を感じながら、晩秋の侘しさ・寂しさを読み取らせて戴きました。
くれぐれもお体大事に、お母様ともども毎日をお元気で過ごされます事をお祈りしていますね。


はこちゃん  (2012/11/18 12:37:05) [コメント削除]

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