街角ブリキのおもちゃ博物館 ティンズ・カフェ

ブリキのロボット、ロケット、クラッシックカーやシルバニアファミリー歴代ハウス等  ノスタルジックなソフトビニール人形、雑貨等その様子はまさにひっくりかえったおもちゃ箱。圧巻です。
 
2026/10/03 0:01:01|その他
秋の俳句 1/7

秋の俳句  1/7

  • 月冴えて 城下あかりに ほの笑む夜 








2026/10/02 0:01:01|その他
ショート・ショート カタカナ言葉の海で溺れて

ショート・ショート カタカナ言葉の海で溺れて

「ジャパンファーストでございますから、まずはステータスホルダーの皆様にコミットしていただかないと!」

政治家の池子さんがマイクに向かって叫んでいるのを、私はおせんべいをかじりながらテレビで見ていた。

「ねえ、お母さん。『ステータスホルダー』って、あの神社の『お札(ふだ)持ってる人』のこと?」

私の脳内変換に、お母さんは急須のお茶を注ぎながら「さあねぇ、なんだか立派な箱に入った洋菓子みたいな名前じゃない」と素っ気なく答えた。

世の中はいつの間にか、カタカナで溢れかえっている。昔は「お付き合い」とか「心づかい」とか言っていた人間関係のあれこれも、今じゃすっかり「コミュニケーション」なんて気取った名前がついている。

広がったのは昭和の終わり頃からだろうか。昔の「おゆずり合い」や「お気持ちの疎通」みたいな温かい言葉はどこかへ追いやられ、なんだか横文字にするだけで、急に「最先端の正しいこと」をしているような顔ができるから不思議だ。

「ファックスしてくださいね〜、お願いしま〜す! カウントはノートに記録してください!」

会社でもそうだ。電話口の若い女の子が、ものすごく爽やかな笑顔でそう叫んでいる。「ファックス」も立派なカタカナだが、今さら誰もそれを外来語だなんて思っていない。ただ、発音には注意が必要だ。

それにしても、だ。英語から来たカタカナが増えるのは百歩譲って許すとしても、難しい漢字と聞き慣れないカタカナを悪魔合体させた言葉は、どうにも怪しい。

「プライオリティの再構築」だの、「アジェンダの可視化」だの。

なんだか、本当は中身がスカスカなのに、横文字の金箔をペタペタ貼り付けて誤魔化しているみたいじゃないか。シュークリームだってホットドックだって(海外でシュークリームと言ったら『靴のクリーム』が出てくるらしい!)、日本人が勝手に作った「和製英語」なのに、顔だけはすっかり西洋人ぶっている。

「第一、なんでも英字にすればいいと思って! ラーメンだってそうよ!」

私はお茶を飲み干して、一人で憤慨した。

「ラーメン? ラーメンは中国語の『拉麺』でしょうが」

お母さんが呆れたように口をはさむ。

「分かってるわよ! でもね、もしラーメンが今新しく海外から輸入されたら、きっと『チャイニーズ・ヌードル・ウィズ・ホットスープ』とか言われて、一杯三千円くらい取られるのよ! それがカタカナの恐ろしいところなの!」

「バカねぇ」

お母さんはフッと笑った。

「あっ、いけね。『バカ』は生粋の日本語だったわ。お馬鹿さんね、私は」

でも、やっぱり思うのだ。 横文字を使って煙に巻こうとする政治家の人たちも、本当は「ちょっと立派に見せたい」だけの、可愛らしいお馬鹿さんなのかもしれない。

今度、あの政治家さんに会ったら笑顔で言ってあげようと思う。

「先生、難しいカタカナの前に、まずは日本語の『おもいやり』をコミットしてくださいね!」って。

きっと先生は、ハトが豆鉄砲を食らったような顔をするに違いない。想像したら、なんだか急におかしくなって、私は残りの煎餅をパリッと丸呑みした。

――が、次の瞬間。

「ぐ……っ、カハッ!?」

喉に見事につっかえて、私は胸を叩きながら叫んだ。

「オ、オーマイガー……っ!!」

お母さんは呆れ果てた顔で、冷たいお茶を差し出してくれたのだった。

 








2026/10/01 0:01:01|その他
小さなパイと二つの風船  2/2話

小さなパイと二つの風船  2/2話


「お父さん、お母さん、ただいま!」

日曜日のお昼すぎ、我が家の玄関チャイムが賑やかに鳴った。ドアを開けると、少し緊張した面持ちの次男と、小さなひまわりのような笑顔を浮かべた彼女が並んで立っていた。

「初めまして。お邪魔いたします」

丁寧にお辞儀をする彼女の横で、次男はどこか照れくさそうに頭をかいている。リビングに上がってもらい、妻が焼いたレモン風味のパウンドケーキと温かい紅茶を出すと、緊張の糸がほぐれたのか、会話は一気に弾み始めた。

「結婚式は挙げないことにしたんです。その代わり、お互いの大切な親戚を一軒ずつ回って、直接『ありがとう』を伝えに行きたくて」

彼女がまっすぐな瞳でそう語る。浮ついたところが一切ない、実にてきぱきとした今風の答えだ。

「そうかぁ、偉いもんだねえ。今の時代、それが一番賢くて堅実だよ」

私は大きく頷きながらも、心のどこかで(やっぱりドレス姿の写真を親戚中に自慢したかったなぁ)なんて、昭和の頑固親父らしい寂しい気持ちを密かに抱え込んでいた。

そんな時、ふと彼女がリビングの隅に置かれた大きなスーツケースに目を留めた。長男が来月の旅行のために送ってきたものだ。

「あ、お兄さんのですか? 実は次男さんから、お兄さんのことをたくさん聞いていたんです」

彼女は紅茶のカップをそっと置き、少し声を落として話し始めた。

「次男さん、昔からお兄さんのことが大好きで……。『兄貴は昔から自分を一番に考えてくれて、何か欲しいものがあると全部譲ってくれた。だから自分は好きな道を進めたんだ。兄貴が一人で自由に暮らしているのは、きっと家族や僕の幸せを見届けて、安心して自分の時間を楽しんでいるからなんだよ』って、いつも誇らしそうに話してくれるんです」

「え……」

私は思わず言葉を詰まらせ、次男の顔を見た。次男は耳まで真っ赤にして「おいおい、余計なこと言うなよ」とパウンドケーキを口に放り込んでいる。

そっけないふりをして他県で一人暮らしを楽しみ、母親と旅行に出かけている長男。そして、そんな兄の背中を「自由でカッコいい」と誰よりも尊敬し、感謝していた次男。

(なんだ、そうだったのか……)

私はいっつも「跡継ぎが」とか「世間体が」なんて、ちっぽけな秤で息子たちを測ろうとしていた。でも、二人の中には目に見えない温かな絆がしっかり通っていて、それぞれの場所でちゃんとお互いを思い合いながら生きていたのだ。

鼻の奥がツンとして、紅茶の湯気が急に眩しく滲んだ。

「お父さん、どうしたの? パウンドケーキのレモンが酸っぱすぎた?」

妻が笑いながら覗き込んでくる。

「ばか言え、うまいよ。とっても甘いじゃないか」

私は誤魔化すように紅茶を一口飲んだ。

来月、長男と妻が旅行から帰ると、あのスーツケースにはきっとたくさんの思い出と、弟から贈られた目に見えない祝福が詰まっているのだろう。

それぞれの風に乗って、それぞれの幸せに向かって飛んでいく二つの風船。その行方を、私はもう寂しがることもなく、ただ愛おしく見送ることができる気がした。








2026/09/30 0:01:01|その他
小さなパイと二つの風船  1/2話

小さなパイと二つの風船  1/2話

「お父さん、男が一人で生きていくのって、そんなに可哀想なことかしら?」

焼き上がったばかりのアップルパイの甘い香りが満ちる台所で、妻が焼きたての熱々を切り分けながら軽やかに言った。

他県で一人暮らしをする長男は、会社でも自分の足でしっかりと立ち、日々の暮らしを実に逞しく楽しんでいる。週末になれば学生時代の友人たちと元気に飛び回っているし、マザコンなどという湿っぽさはどこにもないけれど、私たちが旅行に行きたいと言えば、「たまには親孝行させてよ」と嬉しそうに付き合ってくれる、頼もしく優しい息子だ。

けれど、来週となると我が家のリビングは少し特別な空気になる。

同じく他県で頑張っている二歳下の次男が、結婚を前提に付き合っている彼女を連れてやってくるのだ。お相手のご両親への挨拶を済ませた二人が選んだのは、「結婚式は挙げず、その費用を親戚への挨拶回りに使う」というスタイル。

どこまでも地に足がついた、今風で堅実な選択。無駄のない二人の決断に感心しながらも、昭和の真ん中で若い頃を過ごした私としては、どこか風船の空気が少し抜けたような、寂しい気持ちが胸の端っこをくすぐる。

「長男だって、ちゃんと自分の暮らしを営む力はあるんだ。やっぱりいつかは結婚して、跡継ぎの孫の顔も見せてほしい気もするんだがね……」

私がパイを頬張りながら呟くと、妻はクスクスと笑った。

今という時代、家を建ててローンを抱え、夫婦共働きで子育てに追われる毎日が、必ずしも全員の「幸せのパスポート」とは限らない。世の中の波はいつも気まぐれで、型にはまった幸せのルールブックなんて、もうどこにも落ちていないのだから。

他県に自分の小さな城を持ち、自分の人生を軽やかに愛しながら、母親との旅行を進んで楽しんでくれる長男。彼が選んでいるのもまた、この時代だからこそ味わえる、とても温もりある幸せの形なのかもしれない。

だから、私も本気で頭を抱えているわけじゃない。ただ、二つの風船が違う方角へ飛んでいくのを、少しだけ目を細めて見送っている父親の身勝手な独り言だ。

来週、次男たちがドアを叩けば、我が家に新しい風が吹き込んでくる。長男もきっと、とびきりの笑顔で弟たちの新しい出発を祝うのだろう。

焼き上がったパイの湯気の向こう側で、それぞれの足取りで自分のしあわせを見つけていく息子たちの未来に、私は心の中で小さく乾杯した。








2026/09/29 0:01:01|その他
『欲望という名の、甘くてイジワルなケーキ』3/3話

『欲望という名の、甘くてイジワルなケーキ』3/3話

第3話:キッチンで輝く勲章と、まわり道の「ありがとう」

企業戦士たちが「男のロマンだ」「ハワイだ」と大きな欲望の風船を膨らませていた頃、その横で奥様方はいたって冷静でした。

夫が定年を迎えるとなると、世の奥様方の脳内に突如として現れるのが「これからの長い時間、この人とどう過ごすか」という、なかなか切実なリアリティです。

私の知人の佐藤さんの奥様も、ご主人が「赤いスポーツカー!」と騒いでいる横で、着々と電卓を叩いていました。 「スポーツカーねえ。そんなのに乗るくらいなら、10年騙し騙し使ってきた、あの異音がする洗濯機とガタがきた電子レンジを買い替えたいわ」

妻たちの欲望は、夫たちの膨ら大な見栄に比べれば、どこまでも具体的で地についたものでした。 新しいシステムキッチン、性能の良い掃除機、そして「夫が家にずっといるストレスを解消するための、たまの友人とのおしゃれランチ代」。実に現実的で、ちゃっかりしていて、そして逞しい!

けれど、夫たちが夢を打ち砕かれてショゲ返ったとき、最後にその傷口をそっと塞いでくれたのも、やっぱり奥様方でした。

スポーツカーを諦めて軽自動車を買った佐藤さん。納車の日、どこか申し訳なさそうに「……ごめんな、こんな車になっちゃって」と小さくなっていたそうです。 すると奥様は、ピカピカの軽自動車の助手席に乗り込み、ダッシュボードをポンポンと叩いてこう言いました。 「何を言ってるのよ。小回りが利いて最高じゃない。これなら私のお買い物も楽だし、狭い道の道の駅にも行けるわ。……それにね、あなたが38年間、雨の日も風の日も満員電車に乗って帰ってきてくれたから、この車があるのよ。立派なもんじゃない」

そう言って、スーパーの袋から出してきたのは、ご主人が大好きな、ちょっと高いウナギのお弁当でした。

また、ハワイを諦めて熱海の一泊旅行にした鈴木さんの奥様もそうです。 旅館の夕食時、金目鯛の煮付けを美味しそうにほおばるご主人の姿を見て、ふっと目を細めて言ったそうです。 「ハワイなんて行かなくてよかったわよ。英語も通じないし、こんな美味しい金目鯛もないもの。あなたが真面目に働いてくれたおかげで、こうやってのんびり温泉に入れるんだから、私にとってはここが世界で一番のハワイだわ」

夫たちは、その言葉にどれほど救われたことでしょう。

男という生き物は、つくづく愚かで照れ屋です。 本当はね、胸が締め付けられるほど感謝しているんです。自分の好き勝手な夢に付き合ってくれ、愚痴を聞き、ボロボロになって帰ってきた日も変わらぬ温かいごはんを出してくれた妻に。

でも、「今まで俺を支えてくれてありがとう」なんて恥ずかしくて口が裂けても言えません。

だから佐藤さんは、買い替えた新しい軽自動車の運転席で、前を向いたままボソッと言いました。 「……おい、来週の休み、どこか美味しいものでも食べに行くか。どこでも連れてってやるぞ。車、乗り心地いいからな」

鈴木さんは、熱海の土産物屋で「こんなの要らないわよ」と笑う奥様に、派手な手刺繍のストールを半ば強引に買い与えました。 「いいから持っとけよ。寒くなったら困るだろ」

「君のおかげで、俺はここまで歩いてこられたんだ」 そんな言葉は、照れくさいから全部オブラートに包んで、小さなドライブの誘いや、ちょっとズレたプレゼントに変えてしまう。

でも、奥様方にはちゃんと伝わっているんですよね。 「やれやれ、相変わらず不器用ねえ」と呆れながらも、そのストールを嬉しそうに首に巻く奥様の笑顔。

大きな財団も、胸に輝く金メダルも要りません。 長年使い古されたキッチンの真ん中で、不器用な夫とちゃっかり者の妻が「やれやれ」と笑い合っている。そのささやかな日常こそが、戦いを終えた二人に贈られた、一番誇らしい勲章なのですから。

そして、ふと思うのです。 この定年というゴールテープの傍らには、一緒に歩むパートナーがもう隣にいない方々もたくさんいらっしゃいます。

長年連れ添った最愛の人を道半ばで亡くされ、ぽっかりと空いた穴を抱えたまま今日まで働き抜いてきた人。 さまざまな事情から別々の道を歩むことになり、一人で歯を食いしばって人生の舵を切り続けてきた人。

「自分には、そんな風に笑い合える相手がいない」と、少し寂しく胸を痛めているかもしれません。

けれど、どうか忘れないでください。 あなたが今日まで投げ出さずに、泣きたい夜を乗り越えて、一人で懸命に汗を流してきたこと。その背中を、誰よりも近くで見つめ、誇りに思ってくれていた人が必ずいます。

先立たれた奥様やご主人は、きっと天国の特等席で、「よく頑張ったね、本当にお疲れさま」と、誰よりも大きな拍手を送ってくれています。 離れて暮らすことになった大切な人も、どこか遠い空の下で、あなたが今日という日を無事に迎えたことを、そっと喜んでいるはずです。

そして何より、自分自身をごまかさず、投げ出さず、今日まで泥くさく戦い抜いてきたあなた自身の心が、一番の理解者なのですから。

誰かと寄り添う人生も立派なら、一人で痛みを引き受けて立ち続けた人生も、同じくらい……いいえ、それ以上に気高く、立派なものです。

人生のゴールテープを切ったすべての人へ。 そして、今もなお傷を抱えながら歩み続けているすべての人へ。

あなたの胸に輝くその見えない勲章に、心からの拍手と、あたたかな乾杯を捧げます。

 








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